【獣医師監修】致死率100%!狂犬病について|飼い主の義務を知ろう
この記事では、犬の飼育を検討している方に向けて、狂犬病という病気とそれに伴う飼い主の義務についてお伝えします。
日本で犬を飼うなら、法律を守って犬の登録と狂犬病予防注射を受けさせなければいけません。
狂犬病は日本で発生していないためあまりよく知らないという人も多いかもしれませんが、狂犬病の犬に咬まれることで感染する致死率100%のとても怖い病気です。
現在、日本での発生はありませんが、世界的には多くの人が亡くなっており、予防がとても大切です。
この記事を読めば、狂犬病がどのような病気で、なぜ予防注射を受けなければいけないのか分かります。
1.狂犬病とは
1.1.狂犬病とはどのような病気なのか
狂犬病とは、狂犬病ウイルス(ラブドウイルス科リッサウイルス属)が原因の人獣共通感染症(ズーノーシス)です。
人が狂犬病にかかると、水を飲むことで感覚器に刺激を与えて痙攣などを起こします。その影響で水が飲めなくなるため、患者が水を飲むことを恐れる様子から「恐水病」または「恐水症」とも呼ばれます。
発病後の治療法はありません。噛まれてから概ね2~6週間後に発症するとされています。万が一噛まれた場合、発症する前にできるだけ早く病院へ行き、感染疑いがある場合には、連続したワクチン接種をすることで発症を抑えることができます。つまり発症前に治療を行い、ウイルスの侵入を防ぐことがとても重要になってきます。
感染動物に咬まれた場合は、できるだけ早くワクチン接種をすることで発症を抑えることができます。
発病すると重篤な神経症状を伴って、100%死亡するきわめて悲惨かつ危険な病気です。
犬だけでなくすべての哺乳類に感染します。
感染経路は狂犬病を発病した動物に咬まれることで、病原巣となっている動物は犬、キツネ、アライグマ、スカンク、コウモリ、ネコなどです。
日本、イギリス、オセアニアなどを除き、全世界的に発生しており、毎年5万人以上が死亡しています。人の狂犬病の99%はアジア、アフリカ、中南米で発生していて、犬が主な感染源動物です。
日本では1957年まで毎年発生していましたが、1958年以降発生はありません。輸入症例は数件あり、直近では2020年にフィリピンで犬に咬まれ、日本国内で狂犬病を発症し死亡した事例が発生しています。
狂犬病の症状は急性脳炎で、症状は動物と人で同様です。幻覚、錯乱、全身けいれんなどの神経症状が続いた後、麻痺状態となり呼吸ができずに死亡します。
人間が狂犬病を予防するためには、流行地域へ行く前に予防接種を受け、動物にむやみに近づかないことが大切です。
1.2.狂犬病ワクチンの接種率
厚生労働省の「都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数等」によると、犬の全国の登録頭数は6,095,250頭、その内予防注射を接種した頭数は4,320,473頭で、接種率は70.9%となっています。
一般的に、ウイルスや細菌などに対し、一定以上の割合が免疫をもつと、感染動物が出てもほかの動物への感染が減って流行しなくなる「集団免疫」という状態になります。
70%以上の接種率は、この集団免疫状態にあると言えると思いますが、一般社団法人 ペットフード協会 2021年(令和3年)全国犬猫飼育実態調査の結果によると、犬:710万6千頭であることから、実際にはもっと接種率が低いと考えられます。
出典:厚生労働省ホームページ 都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数等
出典:一般社団法人 ペットフード協会 2021年(令和3年)全国犬猫飼育実態調査 結果
2.飼い主の義務について知ろう
犬の飼い主には3つの義務が法律で定められています。「狂犬病予防法」という法律で定められているため、犬を飼っている人は飼い主の義務として、これから飼うことを検討している方は、そういう義務があることをしっかりと理解しておく必要があります。
① 現在居住している市区町村に飼い犬の登録をすること
② 飼い犬に年1回の狂犬病予防注射を受けさせること
③ 犬の鑑札と注射済票を飼い犬に装着すること
順番に解説していきます。
3.現在居住している市区町村に飼い犬の登録をすること
3.1.犬の登録の重要性
日本では犬を飼ったら登録することが飼い主の義務の1つです。
「狂犬病予防法」という法律で決まっていることなので、必ず市区町村に「犬の登録」の手続きが必要です。
3.2.登録手続きの概要
犬の所有者は犬を取得した日から30日以内に市区町村に登録する必要があります。
犬の登録は、行政が日本国内の犬を把握することで、狂犬病が発生した場合に迅速かつ的確に対応することが目的です。
犬の登録をすると「鑑札」が交付されます。鑑札は登録された犬であることを証明する標識で登録番号が記載されています。鑑札を飼い犬に装着させることも飼い主の義務の1つですので、首輪等に付けておきましょう。
犬の登録は生涯1回ですが、引っ越しした場合等は移転先の市区町村へ届出が必要です。
4.飼い犬に年1回の狂犬病予防注射を受けさせること
4.1.予防注射の必要性
狂犬病の予防は、感染源となっている犬あるいは野生動物に予防注射をすることが最も効果的です。一般的には野生動物と人間との接触は多くないため、飼い犬に対してワクチン接種をすることが、狂犬病予防措置として効果的だと考えられています。
飼い犬に予防注射を受けさせることは、犬だけでなく飼い主や家族、近所の住人や他の動物への感染を防止できます。
現在、日本で狂犬病が発生していないのは、狂犬病予防法によってルールと防疫体制が整えられ、狂犬病予防注射によって適切に管理ができているからだと言えます。
しかしアジアを中心に毎年死者が出ているため、いつ日本に侵入してきてもおかしくありません。特にグローバル化が進んでいる現在は人の往来も活発であるため、侵入リスクは常に存在しています。
4.2.注射はいつ打つの?
生後91日以上の犬は早く予防注射を受けさせ、その後は1年に1回の予防注射で免疫を補強させる必要があります。
予防注射接種時期は毎年4~6月です。日本全国で各自治体が実施する集合注射や動物病院での個別注射を受けることができます。
4.3.集合注射と個別注射について
集合注射にするか個別注射にするかは飼い主が自由に選択できます。
市区町村によっては集合注射を実施していない地域もあるため確認が必要です。
また、狂犬病予防注射済票交付の手続きを代行してくれる動物病院もありますので相談してみましょう。
4.4.予防注射の法的要件
•地域毎の条例にも注意
予防注射に関連する事項について、法律以外に市区町村ごとに条例を定めています。予防注射に関連する費用や交付される鑑札のデザインなど細かなルールに違いがありますので、住んでいる地域のルールを確認する必要があります。
4.5.狂犬病予防注射を打たなくてよい場合
高齢や病気などの理由で予防注射が大きな負担になる場合は、「狂犬病予防接種実施猶予証明書」を発行できます。今年度の予防注射を打たなくてもよいという公的な証明になります。発行には獣医師の判断が必要です。希望する場合は動物病院に相談しましょう。
5.犬の鑑札と注射済票を飼い犬に装着すること
犬の登録手続きをすると「鑑札」、狂犬病予防注射の接種を受けた際には「注射済票」を受け取ることができます。
犬の「鑑札」とは、主にステンレスやアルミなどの耐久性のある金属製で、大きさ約15㎜程度の札のことをいいます。
この鑑札には、登録番号や市町村名が記載されています。この鑑札が正しく装着されていることで、もし飼い犬が迷子になっても、登録番号などから飼い主の元に返すことができます。
「注射済票」は、登録された犬もしくは狂犬病予防注射を受けた犬であることを証明するための標識で、注射実施年度などが記載されています。
厚生労働省のHPで各市町村のデザインを見ることができます。詳しくは以下リンクをご確認ください。
6.違反のリスクと罰則について考える
飼い主の義務を果たさないと狂犬病予防法違反となり罰則が適応されることがあります。
犬の登録をしない人、飼い犬に狂犬病予防注射を受けさせない人、鑑札・注射済票を装着しない人には、20万円以下の罰金が科せられます。
予防注射は飼い犬だけでなく、飼い主や周りの人間を、そして日本を狂犬病から守るために行なうものです。犬を飼うならば飼い主の義務として法律を守りましょう。
7.予防接種や登録などにお金はかかるのか
•登録料と関連費用
犬の登録や狂犬病予防注射に関連してかかる費用は、市区町村ごとに条例で定めているため金額が異なります。
例) 千代田区
犬の登録(鑑札の交付を含む)手数料 3,000円
犬の鑑札の再交付手数料 1,600円
狂犬病予防注射済票交付手数料 550円
狂犬病予防注射済票再交付手数料 340円
•予防注射の費用
予防注射の費用は市区町村や動物病院によって異なりますが、3000円前後です。
併せて予防注射済票の交付に550円くらいかかります。
8.飼い主の義務を守り、より良い社会を
狂犬病は致死率100%の恐ろしい病気です。当サイトだけにとどまらず厚生労働省のHPや他のブログなどでも多く紹介されています。
実は、狂犬病は発病すると致死率がほぼ100%であること、また、犬の登録や予防接種が飼い主の義務であるということを知らない飼い主の方も多いのではないでしょうか。
もしかすると、知ってはいるけど身近な感染症ではないため、危機感が薄れているのかもしれません。
現在も150の国や地域で年間5万人以上の方が亡くなっている致死率100%の恐怖の感染症です。
義務であるということはそれなりの理由があるからです。今一度、当記事を読み返して、しっかり理解したと言えるようになることをお勧めします。
繰り返しますが、現在も世界では多くの人が亡くなっています。
犬を飼うならば、「犬の登録」「狂犬病予防注射」「鑑札・注射済票の装着」が必要です。
愛犬だけでなく、飼い主や周りの人間の命を守るためにきちんと義務を果たすように心がけてください。